りんごの皮

秋から冬にかけて旬を迎えるりんごも今は年中手に入ります。けれどやっぱり冬のりんごは美味ですね。蜜入りりんごなどは絶品です。

そんなりんごを手にして、ふと小学生の頃、りんごの皮を繋いだまま剥くことが出来たら包丁使いは合格と言われたことを思い出しました。くっ、くっ、と包丁が引っかかって、上手くスルスルとは切れないもどかしさを感じた人は少なくないと思います。

いつも家にりんごがある訳でもなく、練習したいのに子供は時間がかかり過ぎて酸化も進むから、なかなか剥く機会が与えてもらえませんでした。それでも何度が皮を剥くうちに、3センチで切れてしまっていた皮も10センチ近くは繋いて剥けるようになります。それも昨日まで3センチだったのが突然10センチに伸びるから喜びもひとしおです。その瞬間は思わずフフンと小鼻が膨らんでしまいそうな感動に包まれました。

りんごの皮剥きはひとりでするものですが、同じ練習でも朗読は多人数ですることも必要だと私は思います。朗読講座に参加する人は、性別も年齢も関係なく同じ立場の学び人です。自分が発音できない音を綺麗に発声する人や、知らない言葉の意味をサラリと教えてくれる人との出会いもあります。何度も何度も声に出すこと・聞くことで自然と練習がひとりでは届かなかった高みに届くようになります。伝える努力、伝わった時の喜び、伝えられる楽しさを実感できるのです。

アクセントや文章の繋がりに苦労した単語や文章も、ある日突然注意されなくなる時が来ます。りんごの皮を剥くように、「あれ?できている・・・」という壁を越えた瞬間です。

その瞬間は人それぞれ、やって来るタイミングは違いますが必ず訪れます。

私はまだりんごの皮を最後まで繋いで剥けたことがありません。お尻のあたりでぶちりと切れてしまうのです。その点、梨は皮も薄いので途中で切れてしまうことなくスルスルと気持ちよく剥けるので、一気に包丁使いの名人になった気分になれます。
惑わされるなかれ(笑)
りんごの皮剥きと朗読は、こんなところも少し似ているように感じます。

りんごの皮剥きに挑戦するように、思わず小鼻を膨らませてしまいそうな感動を、朗読を通して多くの方と体験できることを願っています。

2022.1.22